気づけば空気の密度が春のそれに書き換えられている。 数日前まで頼りにしていたダウンジャケットは今や過剰な熱を孕むだけの重荷へと成り下がった。しかし厄介なのはその温度の二面性。日中の陽気に誘われて薄着で踏み出せば朝晩の冷え込みが牙を剥く。この…
最近のニュースに触れ記憶の底に沈んでいた修学旅行の断片が当時の湿り気を帯びて浮かび上がってきた。 それは長崎の離島での「民泊」という今思えば極めて特異な時間だった。初日の集団行動、長崎の街を見学し旅館で一泊する。そこまでは誰もが思い描く修学…
高校時代、電車の窓越しに繰り返された数秒間の定点観測。 加速する景色のなか通り過ぎる公園でひとり空気を切り裂くように拳を突き出す人影。 それは毎日決まった時刻に決まったルーティンとしてそこに刻まれていた。別に滑稽に思えたわけでも殊更に感銘を…
月曜日のベンチプレス。さらなる高みを目指して設定したプラス10kgという重量は今の肉体にとって挑戦を通り越し制御不能な暴力へと変貌してしまった。 セットの途中で力尽きバーベルの重みが逃げ場を失った瞬間。本来ならセーフティバーへ逃がすべきエネルギ…
昨日の続きになるが日本野球が出力を求める方向に舵を切ればその代償としてトミージョン手術を受ける野手は確実に増えていくはず。 ショートやサードそしてキャッチャー。深い位置からの送球や盗塁阻止といった極限のパフォーマンスにおいて強大化した筋肉が…
WBCの試合を観ながら日本野球の現在地を俯瞰すると一つの大きな違和感に突き当たりる。 それは日本人選手の卓越した「技術」と世界基準の「出力」の間に横たわる深い溝。 日本の選手は確かに行儀が良く丁寧な守備や緻密なバットコントロールにおいて世界屈指…
布団に入り、ようやく訪れるはずだった安らぎは、脚を貫く鋭利な衝撃によって無残に打ち砕かれた。 それは慣れ親しんだ筋肉痛の鈍い重みとは明らかに一線を画すまるで微弱な電流が神経の網を走り続けるような執拗でピリピリとした痛みだった。 スクワットで…
WBCの敗北。 期待が大きかった分その幕切れが残した空虚な寂しさは今も胸の奥底に重く沈殿している。勝負の世界の非情さを改めて突きつけられた一日だったが外の世界の勝敗以上に今の私を執拗に苛んでいるのは逃げ場のない室内へと貫通してくる花粉の脅威。 …
スクワットという種目の残酷さとその見返りとしての強烈な疲労感。 トレーニング直後からすでに神経が悲鳴を上げているのがわかった。階段を昇るたびに膝が笑い自分の意思とは無関係にガクンガクンと力が抜ける感覚。それは単なる筋肉の限界というより脳から…
野党による内閣不信任案や委員長の解任決議案。 あれはもはや実効性を伴う矛ではなく政治的なパフォーマンスとしての定型文に成り下がっているのではないか。出したところで否決されるのは目に見えているし失敗した側に何らかのペナルティがあるわけでもない…
NetflixでWBCを観ていると広告なしプランであってもイニング間には律儀にCMが差し込まれる。 しかしそこに不満はない。むしろ画面端に表示されるカウントダウンの秒数が緊迫した試合の合間のトイレ休憩を正確にガイドしてくれる親切なタイマーのようにすら思…
朝の目覚めを支配するのは春の暴力的なかゆみ。 まぶたの裏側を指先でなぞるあの感触は理性など一瞬で吹き飛ばすほどの甘美な中毒性を孕んでいる。脳が快楽物質を分泌しているのではないかと疑うほどその瞬間の充足感は凄まじい。 しかし眼内にはICL(眼内コ…
雨の降る灰色の空の下に橋の向こうからやってくる車たちが屋根に不釣り合いなほど厚い雪を載せている。 この場所はただの冷たい雨なのにわずか数キロ先の異世界では冬が最後の手を振っているのだ。埼玉のこの極端なまでの局所的な天候。それはまるで見えない…
スギからヒノキへあるいはスギのピークが深まったのか。 目の痒みに加え鼻水が止まらないという波状攻撃のフェーズに入った。一般的にヒノキはスギよりも粒子が小さく目の粘膜への刺激が強いと言われているが鼻へのダメージも決して小さくない。 この季節の…
WBCをNetflixで視聴している。独占配信に対する世間の不満は理解できるし当初は同様の違和感を抱いていたのも事実。 しかし今はもうコンテンツに対して直接対価を支払うモデルへ完全に移行すべき時期に差し掛かっているのではないか。NPBとMLBの間に横たわる…
すべてはデーモン・コアという不吉な名を持つプルトニウムの塊への興味から始まった。 マイナスドライバー一本で臨界の淵を歩くような、あまりに無防備な実験。わずかな手元の狂いが青い光を呼び二人の科学者の命を奪ったという事実に戦慄を覚える。 同じプ…
会社から家へと向かういつもの道。そこには決まった時間に必ず現れる巨大な障害物がある。 中央線のない細い道に陣取る一台のトラック。すぐ近くに広い駐車場を備えたコンビニがあるというのになぜわざわざこの狭い場所を選んで休息と称する停車を続けるのか…
眠れない夜つけっぱなしにしたラジオ。 明け方のNHKから流れるラジオ体操のメロディが覚醒直前の意識に滑り込み夢と現実を混濁させる。夢の中で全力で手足を動かし第一、第二と完遂する。 結果として目覚めた瞬間に残るのは爽快感ではなく現実に蓄積され…
小学館のマンガワンを巡る一連の騒動。 そこから立ち上る言葉にできないほど重く暗い沈殿物が心の底へと音もなく積もっていく。被害者の尊厳を根底から破壊する魂の殺人。その加害者を事実を把握しながら別名義で再起用していた編集部の姿勢は企業倫理の欠如…
花粉症の季節が身体の細部をじわじわと侵食している。眠りは浅く意識が途切れても闇の底まで降りていけない感覚。薬の副作用なのか口内は砂漠のように乾燥し目は執拗なかゆみに襲われる。無意識のうちに寝ながら目を掻いているのだろう朝の鏡に映る自分はど…
一ヶ月前に綴ったあるコスプレイヤーへの憂鬱。 spimarsh.net その直感はこの一ヶ月の狂騒が証明してしまった。連日のように繰り返される炎上。 もはや手が付けられない領域に達しており性格という言葉では片付けられない人間の本質の歪みが露呈し続けている…
アメリカの教室には星条旗が掲げられているという。多民族国家を束ねる接着剤としての旗。対して日本の教室を思い浮かべれば黒板の横に鎮座するあの無機質なスピーカーこそが、真の象徴であったと言える。 チェンソーマンレゼ篇で暗がりのスピーカーが日の丸…
人間の体は完成品なんかじゃない。 完成どころかいまも静かにパッチが当たり続けている未完成のプロトタイプ。親知らずは退場し使われない筋肉は静かに縮む。一方で長時間座る生活に合わせて骨や関節の負担配分は変わり血管の走り方すら世代をまたいで最適化…
「二・二六事件において海軍は関わっていないのか。」 入り口はそんな素朴な疑問だった。調べれば答えは明快だ。組織としては陸軍の青年将校が主役であり海軍は基本的に鎮圧側に回っていた。 青年将校が何を目指していたのかを辿れば必然的に北一輝という人…
ドラえもんの『海底鬼岩城』が42年の時を経てリメイクされる。 1983年の公開からこれほどの歳月が流れた事実に改めて時間の重みを感じる。公開初日に足を運ぶのは難しいかもしれないが一つの物語が40年以上のスパンで語り直されるという現象そのものに抗いが…
自転車の車道走行が原則と周知されて久しいが狭い道路で後続車両に追いつかれた際、頑なに道を譲ろうとしない光景をよく目にする。 「車道が狭い」という不満を漏らす前にまずは車両としての基本的な振る舞いが問われるべきではないか。これは単なるマナーの…
最低賃金が2倍になったところで食料品も同じように2倍になっていれば生活の質は実質的に何も変わらない。しかし数字だけが膨れ上がるインフレーションの渦中で不思議なほど動きの鈍い指標がある。家賃だ。卵や牛乳が次々と最高値を更新し固定資産税もしっか…
円周率ってなんなんだろうと考えた。 ずっと当たり前みたいに「3.14」を公式に入れてきたけど正体についてちゃんと向き合ったことはなかった気がする。 直径に対する円周の比率。 ただそれだけの定義なのに3.14…と終わりなく続くあの数字には妙な存在感があ…
SNSのXを眺めているとインプレゾンビという名の電子の亡霊たちが跋扈している。 日本語圏であれば一目でそれとわかる支離滅裂で違和感のある文章の羅列。なぜこれほどまでに醜悪なノイズが溢れかえっているのかと見るたびに暗澹たる気持ちにさせられる。結局…
最近のメディアや広告に蔓延する「ボディ・ポジティブ」という言説にはどうにもやり切れない違和感と苛立ちが付きまとう。ありのままの体型を愛そうという響きは耳に心地よいがその実態は不健康な状態の無責任な美化に過ぎない。 特に滑稽なのはこの太ってい…