阪神の大山悠輔選手がFA権を行使せずに残留することを決めた。ファンにとっては嬉しいニュースだったはずだ。「来シーズンも頼むぞ!」と、誰もが心から喜んだ……と言いたいところだが、ちょっと気になる話があった。
なんでも、大山選手が移籍するかもしれないという話が出た際、一部のファンが「移籍したら自宅を襲撃する」とSNSに書き込んでいたというのだ。最初に聞いたときは「まさか」と思ったが、調べると本当にそんな投稿があったらしい。しかも、彼の実家が経営している飲食店を訪れてその様子を写真付きでSNSに投稿する人までいたとか。「応援の気持ち」と言いたいのかもしれないが、さすがにこれはやりすぎではないか。
FA権というのは、選手が長年プロとして努力を重ねた結果得られる貴重な権利だ。それをどう使うかは選手自身の自由であってファンが口を出す筋合いではない。たとえライバル球団に移籍する可能性があったとしても、選手を責めるのは筋違いだ。抗議したいならまずは選手ではなく球団に向けるべきだろう。
ただ、プロスポーツが人々の生活に根付きすぎているからこそ、こうした感情的な行動が出てしまうのかもしれない。「自分が応援してきた選手は自分たちのものだ」という意識がどこかで働いているのだろう。その結果が「自宅を襲撃」とか「実家訪問」といった行動に繋がるのだとしたら、もはやファンではなく迷惑行為だ。
それにしても「プロスポーツの熱狂」がここまで来てしまうと、少し距離を置きたくなってしまう。純粋に応援したい気持ちは分かるが、そこに過剰な感情や行動が加わるとスポーツそのものが息苦しくなる。それは選手にとってもファンにとっても不幸なことだ。
結局、大山選手は阪神に残留することを選んだ。ただ、それがファンのこうした行動に影響されたのだとしたら少しばかり複雑な気持ちになる。彼自身が心から「阪神でやりたい」と思った結果なら素晴らしいが、もし「移籍したらどうなるか分からない」といったプレッシャーがあったとしたら……それは少し怖い話だ。
エンドロールを迎えた映画のように、このニュースもひとまず「ハッピーエンド」として終わったのかもしれない。でも、SNSで選手や家族に圧力をかける人たちは、きっと次の「物語」にも出てくるのだろう。熱すぎるファンたちには、ぜひとももう少し「客席」で楽しむという基本を思い出してほしい。応援って本来はそういうものじゃなかったっけ?