最近ファミレスのランチ価格がじわじわ上がっている。ガストのランチセットも気づけば700円台が普通になり、500円で済んだ時代が懐かしく思える。一方でサイゼリヤは驚くほど価格を据え置いて頑張っている。この差を見るとファミレス業界もいよいよ二極化が進んでいるように思う。
値上げの理由は分かる。原材料費も人件費も上がっているのだから価格に反映されるのは当然だ。むしろ「これまでよく頑張っていたな」と思うくらいだ。特にサイゼリヤには頭が下がる。しかしガストのランチセットを見て「これで700円はちょっと高いかも……」と感じてしまうのは、私たちの収入――つまり賃金が上がっていないからだろう。
インフレそのものは悪いことではない。むしろ経済が動いている証拠だ。ただ、賃金がついてこなければ、値段の上昇だけが生活者を圧迫する結果になる。「700円ランチ?それならいいじゃないか」と言えるのは、賃金がそれに見合って上がっている人だけだ。
かつてドラマ『ランチの女王』では、「ランチはワンコイン500円以内が理想」と語られていたが、今では500円ランチなど奇跡に近い。700円ランチもまだ安い方で、1000円を超えるメニューも増えてきた。「時代の流れだ」と言われればその通りだがランチの値段は上がっても時代は私たちの財布事情を置いてきぼりにしている。
インフレの波に乗って物の値段はどんどん変わっていく。ファミレスのメニューも変わるしワンコインランチは過去のものになる。それは仕方ないのかもしれない。でも、その波に追いつけない賃金が私たちを苦しめるのはちょっと問題だと思う。700円ランチを「高い」と感じる人がいるのは物価の問題ではなく収入の問題だろう。
サイゼリヤの低価格がいつまで続くかは分からない。彼らが耐えきれなくなって値上げしたとき私たちは「まだ安い方だ」と受け入れるのかそれとも「もう無理だ」と外食を諦めるのか。そう考えると「インフレを受け入れられないのは努力不足」なんて言われる日も近いかもしれない。
さて、今日もランチに何を食べるか考えながら財布とにらめっこ。結局、賃金が上がらない限り食事はどんどん「贅沢品」になっていくのだろう。そんな世の中で「たまにはファミレスで贅沢するか」と言える日が来るのかどうか。あの頃のワンコインランチが恋しくなる日々だ。