気づけば冬だ。冷たい風が頬を刺し富士山も真っ白な雪をまとっている。家ではストーブの前が特等席で猫と一緒にぬくぬく過ごす日々。乾燥で足はカサカサ、喉はイガイガ。「ああ、今年も冬が来たんだな」と実感する。
冬といえば感染症が一気に勢いを増す季節でもある。風邪、インフルエンザ、コロナ、マイコプラズマ肺炎――病気の名前を並べると、それこそバーゲンセールのような賑やかさだ。とはいえ、どれも買いたくない品ばかり。むしろ「どうかこちらには寄らないで」と願う日々だ。
感染症対策は毎年欠かさない。マスク、手洗い、うがい、加湿器――昔から変わらない基本セットだ。さらに人混みを避け体調管理を意識する。それでも感染する時は感染するのが現実。どうやら病気の方にも「選ぶ基準」があるらしい。それに選ばれないように私たちは毎日せっせと対策を重ねているのかもしれない。
考えてみれば健康でいるための努力って結構不思議だ。感染症は目に見えないのにそれに怯えながら生活するのはどこか滑稽でもある。でも、誰もが病気に「選ばれない」よう祈りながら暮らしているのだと思うと少し微笑ましくも感じる。
そんなことを考えながらストーブの前で猫と過ごしていると、猫がくしゃみをした。「君も選ばれちゃった?」と笑いながら足元にいる猫に軽く小突いてみる。完璧な対策なんてないし冬を生き抜くのは結局健康であることを願う気持ちなのかもしれない。
病気のバーゲンセールが終わる春まで、せめて心穏やかに過ごしたい。感染症に選ばれることなくこの冬をなんとかやり過ごそうと思う。