今年のNPBストーブリーグは特に議論が多い。その中でも上沢投手のMLB挑戦からわずか1年でNPB復帰そしてソフトバンクへの移籍*1という流れは多くの波紋を呼んだ。制度上は問題ない。しかしこの一連の流れにはポスティング制度の本質的な問題が浮かび上がっている。
前提として上沢投手は国内FAすら取得していない状態。今年のポスティングによる移籍では日ハムがMLB球団からポスティング譲渡金約92万円を受け取っただけで終わり、移籍先のソフトバンクから金銭補償も人的補償もなされない。この点が多くのファンに不公平感を抱かせる結果となった。
ポスティング制度は本来、海外FA権を持ってない選手が全盛期でプレーするための仕組みだ、球団にも見返りがある。しかし今回のケースではMLB挑戦が「経由地」のように利用され、結果的に制度の意図が損なわれた印象を与えてしまった。選手個人を責めるべきではないが、球団のサポートや後押しを受けて海外挑戦した結果、1年で国内の別球団に移籍する事態に多くのファンが違和感を覚えたのも事実だ。
この問題は一度きりの事例で終わらない可能性がある。同じことが続けば球団側がポスティングを認めることに慎重になり、結果として選手の挑戦を支援する環境が狭まる危険性がある。ポスティング制度の信頼性が揺らげば、次世代の選手たちがその恩恵を受ける機会が減ってしまうだろう。
ではこのようなケースを防ぐためにはどうすればよいのか?まずポスティングで海外移籍した選手が短期間でNPBに復帰する場合、国内FAと同様に金銭や人的補償を義務付けることが必要だろう。また、ポスティング制度自体を廃止し一定年数(例えば5〜6年)で一律FA権を得られる仕組みに移行するのも一案だ。
ただ、契約報道では日ハムが単年契約を提示し、ソフトバンクが複数年契約を用意したとされる。それを聞くと上沢投手の気持ちも少しわかる気がした。プロ選手として長く安定した環境を求めるのは当然だ。そう考えると制度の問題だけでなく、球団と選手の価値観のズレも見えてくる。それをどう埋めていくのかもまた、球界全体が向き合うべき課題なのだろう。