中学から高校に上がるとき5人に4人はソフトテニスをやめるらしい。実際これは体感としても納得できる話で、ほとんどが硬式テニスに転向するからだろう。よく「ソフトテニスと硬式テニスは共通点が多く移行しやすい」と言われているが、正直それは違うと思っている。
まず中学のソフトテニスはダブルスがメインのためフットワークを軽視しすぎる。単純に足を動かす量が少ないしポジショニングの意識も甘くなりがちだ。次にゴムボールを打つせいでスイングのフォームばかりを気にして筋力をつけることを後回しにしがち。結果力のないスイングでもそれなりに打てるから筋トレの優先度が低くなってしまう。そして最後にバックハンドの片手打ちにこだわりすぎる点。硬式では両手打ちが主流なのにソフトテニスの影響で片手にこだわる選手が多くそれが移行の壁になっている。
この考えは十数年変わっていないし、実際にこの前中学のテニスコートの前を通ったときも全く変わっていなかった。脚はほとんど動いていないし線は細いしバックハンドは相変わらず片手打ち。もちろんその学校だけの可能性もあるが、全体的な傾向として「進歩していないな」と感じざるを得なかった。
極端な話バスケ部の選手にラケットの握り方と振り方だけ教えたら3日も経たずにソフトテニス経験者を蹴散らす気がする。もちろんトップレベルの選手は違うのだろうが、一番多い中間層がこのレベルでは競技としての発展は厳しいかもしれない。
よく「ソフトテニス経験者が硬式テニスのレベルを押し上げる」なんて言われることがあるが実際はそんなことはない。むしろフットワークや体づくりの意識が低いまま移行する選手が増えても硬式の競技レベルが上がるとは思えない。大半のプレイヤーは転向してから硬式テニスの基礎を一から学び直すことになるしその間に淘汰されることも多い。結局、ソフトテニスと硬式テニスは似ているようで決定的に違う競技であり、移行が増えたところで競技全体の底上げにはつながらない。
そしてそれが硬式テニスをやめる原因になる。そういうケースを山ほど見てきた。
だからこそ硬式テニスをやりたいなら最初からソフトテニスはやるなと言いたい。そしてもし中学に硬式テニス部がないのなら仕方なくソフトテニスをやるのではなくバスケットボールをやった方がいい。
逆に言うとソフトテニスをどうしてもやりたいなら硬式テニスと同じ練習すればいい。フットワークと筋トレをしっかりやればいい。筋肉つけると体が重くなる?ちょっと筋肉に対する知識不足じゃないすか?
欲を言えばピックルボールが部活動に採用されて欲しい。あの狭いコートでシングルスをやるとボールが返ってくる回数が圧倒的に多く運動量が増える。自然とフットワークが鍛えられ、ラリーのテンポも速いから反応速度も上がる。しかも無駄なフォームやクセを身につけずに済む。結果的に硬式テニスへ移行したときの適応力が格段に上がる。そして何よりバドミントンよりもお金がかからない。
日本ではソフトテニスが根強く残っているがこれは文化的な要素が強いだけ。もし硬式テニスのレベルアップを本気で考えるなら、ソフトテニスよりもピックルボールだと思う。世界的に人気が高まっているピックルボールが日本でも中学の部活動の選択肢になればテニスの競技レベル全体が底上げされる可能性は十分にある。
ソフトテニスを経由しないと硬式テニスができない、そんな時代はそろそろ終わってもいいのではないか。というか硬式テニス部少なすぎるだろ。問題はそこだった。
8割が中学卒業のタイミングで辞める生涯スポーツ?なんすかそれ?