1996年、クリケット・ワールドカップを前に厳戒態勢のインド警察本部に、巨大犯罪組織による破壊工作の情報が入った。特別捜査班のシヴァムは犯罪組織のリーダーを追い、南インドのラトナギリへ向かう。ラトナギリの「赤海」と呼ばれる地域を縄張りとする4つの村からなる集落は、凶悪な密輸団の巣窟として恐れられていた。情報を得るため密輸業者に成りすましたシヴァムは長老シンガッパから、12年前に始まった凄惨な抗争事件と、赤海の英雄デーヴァラとその息子ヴァラの血塗られた伝説を聞く。
『デーヴァラ』を観た。最初に飛び込んできたのは、不自然すぎる吹替の演出。あれ?こういう映画なの?と戸惑ったけれど、完全に杞憂だった。
インド映画らしいパワーのごり押し感が全編にわたって炸裂していて、それがもう爽快というか、圧倒というか、意味不明なくらい強引なのに成立してしまう空気感。
これこそインド映画の醍醐味だと思う。
ただし、導入が長い。いや、長すぎる。
3時間近くある映画の中の一部にすぎないはずなのに、体感では一般的な映画の前半パートを丸々食ってる感覚。登場人物はやたら多いし、関係性を理解する前に次の展開が始まるから、もう「理解しようとするな、感じろ」モードに切り替えるしかない。
それでも、物語がデーヴァラ本人の話に移ってからはかなり面白い。
そして中盤、物語は大きく動く。
驚いたのは役者は変わらずに主人公が変わること。この構成、ちょっとズルいくらいに上手い。
そして弱弱しく演じるのうますぎる、腕も細かったような気もする。
そして一気に視点がシフトして作品の空気もぐっと締まっていく。そしてクライマックスへ向かって、熱量がどんどん上がっていく。
……が、言わせてほしい。
脚本家、筆が止まらなすぎ。
もう蛇足入ってます。
明らかに「2」へとつなげるための要素が最後に詰め込まれていて、デーヴァラがいなくなった理由が今ここで出る?感満載。
でもね、日本での興行的に「2」たぶん来ない可能性もある。
観客3人だったよ。しかも1日1回上映。
これだけで1本としてしっかり完結させてほしかった。
そうすれば、もっと綺麗に終われたし、むしろ高評価で終わったと思う。
続編、嫌な予感しかしない。
中途半端に投げた風呂敷は回収されない未来の方が濃厚なんだからだったら最初から畳んでおいてくれ……。
それでも、この1作目単体では、力技でねじ伏せるエネルギーに満ちた1本だった。
観る側にも体力がいるけど、そのぶん熱量はしっかり伝わる。
それだけに、惜しい。ほんと、惜しい。