複合商業施設建設のため、さびれたシャッター商店街を取り壊すよう社長から指令を受けた阿川建設の裏社員。しかし、ライバル社の川端建設も同じ目的で裏社員を商店街に潜入させていた。町の大地主をターゲットに裏社員同士が火花を散らすものの、なぜか動けば動くほど商店街の住人たちに愛されてしまう裏社員たち。一方、潰れかけの商店街には、立て直しを図ろうとする熱血漢や、謎多き訳あり男、彼らに恋心を抱かせる幼なじみや婚約者らも現れ、それぞれが騙し合い、手を組むことで、事態は思わぬ方向へと転じていく。
『裏社員。-スパイやらせてもろてます‐』を観ました。
特にこれといった前情報も入れず主演を務める「WEST.」というグループについても不勉強なまま完全にフラットな状態で鑑賞に臨んだ。
結論から言うと、個人的にはいくつかの点で「うーん、惜しい!」と感じる部分が目についた作品だったというのが偽らざる感想である。
まず映画全体を通して感じたのはある種の「物足りなさ」。そしてその感覚を補強するかのように、制作面における「安っぽさ」がどうしても画面の端々から見え隠れしてしまった。もちろん、作品に何を求めるかは観客それぞれだろうし、限られた予算の中でも光る映画は数多く存在する。ただこちらも時間とお金を投資している観客の一人として、率直に気になった点は指摘させてもらいたい。
出演者の方々の演技力そのものに大きな問題があるわけではないと思う。むしろ、それぞれ達者な方々なのだろうと推察する。ただ作品全体のトーンとしてどこか「うっすら滑っている」ような、あるいは狙っているであろうコメディ感やクールさが、今ひとつ観ているこちらにハマってこない、空回りしているような印象を受ける場面が散見された。これが意図された「味」なのだとしたら残念ながら自分の好みとは少しズレていたようだ。個人的には、その「滑り感」が少々辛く感じる時間帯もあった。
アクションシーンには、確かに「おっ」と思わせる光る部分もあった。キレのある動きや、工夫を感じるカメラワークも見受けられたように思う。しかしながら、例えば登場人物が派手に吹っ飛ぶようなシーンになると途端にVFXのチープさが際立ってしまい、結果として全体的に「中途半端」という印象が拭えなかったのは残念な点だ。良いところと残念なところが混在している印象だった。
物語の大きな軸の一つである「商店街の復興」というエピソードも、個人的にはもっとどちらかに振り切ってほしかったと感じる。いっそ荒唐無稽なファンタジーに寄せてしまうか逆に徹底的にリアリティを追求して人間ドラマを深掘りするか。もしかしたら、登場人物それぞれに見せ場を作り、全員を主役のように描こうとした結果なのかもしれないが、2時間という上映枠の中では、個々のエピソードがやや散漫になりそれぞれのキャラクターやテーマの深掘りが不足してしまったように感じられた。
総じて「まあ、こういうテイストの作品なのだろう」と、ある意味で納得するしかない、というのが最終的な着地点。事前にどういう作品なのか、ある程度情報を入れて期待値をコントロールしていれば、また違った楽しみ方ができたのかもしれない。これは完全にフラットな状態で観たからこその正直な感想でした。