梅雨の湿気でどうしようもなくなっていた髪をようやく切ってきた。 いつも行ってる小洒落た美容室じゃなくて今回初めて足を踏み入れるいわゆる格安カットってやつ。安かろう悪かろうも半ば覚悟の上だった。
でも結論から言うとカットの腕は意外と悪くなかった。ちゃんとこちらの意図を汲んでくれて仕上がりも特に違和感はない。これなら十分に満足。
…と、思ったのも束の間だった。 問題はシャンプーの時に起こった。 シャンプー台に頭を預けると次の瞬間頭皮に猛烈な勢いで指が突き立てられる。痛いというわけじゃない。でもとにかく力が強い。なんというかまるで泥んこになって帰ってきた犬でも洗うかのような力強さでゴシゴシガシガシと髪を、いや頭皮を洗われる。文字通り頭をわしゃわしゃされているという表現が一番しっくりくる。とにかくちょっと乱暴気味。
その問答無用なわしゃわしゃを頭皮に感じながら、不意に雷に打たれたような衝撃が走った。
あ、これ…。自分が家のペットをやってることと全く同じだ…
そう気づいた瞬間一気に罪悪感が押し寄せてきた。 うちのペットも風呂場ではこんな気持ちだったのか。ただただされるがままにこのゴシゴシに耐えていたのか。本当は嫌だったんだなきっと。 ごめんな、本当にごめんな…。 なんでこんな格安カットのシャンプー台で突如としてペットへの謝罪と後悔の念に駆られているんだろう。
カットの腕は良かった。でもあのシャンプーは正直もう二度と体験したくない。 はてさてこの店にまた次に来る機会はあるのだろうか。悩ましい。
…まあいいか。 とりあえず家に帰ったらうちのペットにいつもより優しくしてやろう。そして、次はもう少しだけ手加減してやろう。 そんなことを固く心に誓った。