本当に最悪だった。
原因は目の中に入ったおそらくホコリか何かであろう小さな小さなゴミ一つ。
別に激痛で目を開けられないというほどじゃない。でも常に確実にそこに異物がいる感覚。まばたきをするたびにチクッというかゴロッというかとにかく不快感が走り続ける。
気になって何も手につかない。
こうなると人間が取る行動なんて一つしかない。
とってやろうと、無意識のうちに目をこすってしまう。
でも自分の目にはICLいわゆる眼内コンタクトレンズが入っている。そんな何十万円もかけて入れた繊細な医療機器が収まっている眼球をゴシゴシとこするなんて行為が、どれだけ危険で愚かなことか。頭ではそれこそ痛いほど分かっている。万が一レンズがズレたり傷ついたりしたら…なんて最悪の想像が頭をよぎり血の気が引く。
なのにだ。目の前のこのどうしようもない不快感にどうしても抗えない。
こすっても全く取れない。こすればこするほど異物感はなぜか増していくような気さえする。
結果として残るのはうさぎみたいに充血した目と何やってんだ自分…という普通の人以上の虚しさと深い後悔だ。
半日ほどそんな不毛な戦いを続けた後ようやく涙と一緒にポロッと出ていったのかいつの間にか異物感は消えていた。
やっと訪れた束の間の平和。でも残ったのは目の充血と半日を無駄にした徒労感そしてレンズ、大丈夫だよな…?というかすかな不安。
後で調べてみたらやはり目にゴミが入った時に一番やっちゃいけないのが「目をこすること」らしい。角膜に傷がついてそこからバイ菌が入ったりもっとひどい眼病に繋がったりする危険があるんだとか。ICLが入った眼ならなおさらのこと。
正解は「涙で流す」か、「キレイな水で洗い流す」。それでもダメなら、「さっさと眼科に行く」。ただそれだけ。
頭では理解できる。でもあの不快感の真っ只中にいる時に果たしてそこまで冷静な判断ができるだろうか。
次にまた同じことが起きたら今度こそはICLが入ってるんだぞ!と自分を強く戒めてこすらずにいられるだろうか。
正直、あまり自信はない。