ふと映画館に置いてあるチラシ、いわゆるフライヤーを持ち帰ってみた。
なんとなく100円ショップで買ったB5サイズのクリアファイルに入れてみる。
すると、どうだ。ペラペラの紙だったそれが急に立派なコレクションのように見え始めた。サイズ感もぴったりでなかなか様になっている。パラパラとめくるたびに鮮やかなポスタービジュアルが次々と目に飛び込んでくる。
「なんでもっと早くやらなかったんだろう」という後悔がじわりと込み上げてきた。今まで数え切れないほどの映画館に行っていたのにこの「無料のアート」をスルーし続けてきたなんてもったいないことをした。
だから決めた。これからは地道に集めることにしよう。このコレクションの真価は単に眺めて楽しむだけじゃないことに気づいたからだ。
これは未来の自分への「視聴予約リスト」になる。
映画館で見逃してしまった作品も数ヶ月すれば配信サイトやレンタルに降りてくる。でもその頃には公開当時に「あ、これ面白そう」と思った記憶なんて日常の忙しさに埋もれて綺麗さっぱり消えていることが多い。そんな時にこのファイルをパラパラと見返すんだ。「ああ、そういえばこれ気になってたやつだ」と記憶のスイッチが入る。フライヤーが過去の自分の興味と現在の配信環境を繋ぐ架け橋になってくれる。
最近の動画配信サイトは優秀だ。「あなたにおすすめ」といってこちらの視聴履歴に基づいた作品を次々と提示してくれる。確かに便利だしハズレも少ない。でもそれは同時に「偶然の出会い」を殺しているとも言える。
AIが弾き出した「好きそうなもの」に囲まれて自分の世界が少しずつ狭まっているような閉塞感を感じることもある。フライヤーは違う。そこには自分が普段見ないようなジャンルの映画も興味がない俳優が出ている作品も等しく並んでいる。その雑多な紙の束を眺めることはアルゴリズムによるフィルターバブルを突き破って予期せぬ名作と出会うための儀式になるかもしれない。
デジタル全盛の時代にあえて紙のカタログを手元で作る。画面上のサムネイルをスクロールする代わりにページをめくる指先の感触で今夜観る一本を決める。
なんだかとても贅沢で豊かな時間の使い方の気がする。これからは映画館に行く目的が一つ増えた。鑑賞はもちろんだけどその前に棚の端から端までチェックして未来の楽しみを「仕入れ」ていく。
B5ファイルが分厚くなっていくのが、今から楽しみ。