渋滞した幹線道路で遠くからサイレンの音が聞こえてくる。その瞬間ドライバーたちの間に「緊急車両を通さなければ」という無言の連携が生まれ左右に車が寄って中央に一本の道が出来上がる。しかし殺意すら覚えさせる連中がたまにいる。
みんなが苦労して作ったその「空白地帯」をここぞとばかりにアクセルを踏んで突っ走っていく一般車両だ。緊急車両の後ろをピッタリついていく「コバンザメ」みたいな奴も大概だがもっと信じられないのは緊急車両の「前」を走っていく奴だ。お前のために道を開けたんじゃない。後ろから救急車や消防車が来ているからみんなが脇に避けて止まっているのになぜお前がその特等席を堂々と走っているんだ? 「ラッキー!空いてるじゃん」じゃないんだよ。その神経の図太さはもはや一種の才能かもしれないが公道においてはただの害悪でしかない。
バイクもそうだ。車が動けないのをいいことに緊急車両のために空いたスペースをすり抜け天国か何かと勘違いしてヒョイヒョイ走っていく。彼らの頭の中には「緊急車両の進行を妨害してはいけない」という法律よりも「自分だけ早く行ければいい」という浅ましいエゴしかない。
百歩譲って後ろをついていく車の中に搬送されている患者の家族がいる可能性はあるかもしれない。気が動転して救急車の後を追ってしまっているのかもしれない。心情的には察する部分がなくはないが、れでも二次災害の危険がある以上許される行為ではない。ましてや前を走る奴やバイクにそんな情状酌量の余地なんて1ミリもない。
これは、「譲り合い」とか「優しさ」とか、そんな性善説で語る話じゃない。明確な「交通ルール」の話だ。道路交通法には緊急車両が近づいた時の対応がはっきりと記されている。それを守れないあるいは状況を理解できていないということはシンプルに「運転する資格がない」ということだ。ハンドルを握る技術以前に社会のルールを守る知能が欠落していると言わざるを得ない。
そういう手合いを見るたびに思う。警察はもっと厳しく取り締まってほしいしなんならその場で免許を取り上げて二度と返さないでほしい。赤信号の意味やサイレンの意味が分からない人間に鉄の塊を動かす許可を与えてはいけない。今の免許更新制度には視力検査だけじゃなく最低限の「知能検査」や「モラル検査」も導入すべきだ。命を運ぶ道を馬鹿の滑走路にさせてはいけない。開いた道を塞ぐその後ろ姿に心底からの軽蔑を送る。