iPhoneのフィルムが割れた。それだけでも十分に憂鬱なのに頼みの綱であるヨドバシカメラのサイトを観れば「取り扱い終了」の非情な宣告。iPhone15Proともなれば市場では既に旧機種扱いなのだろうか。仕方なく現代のインフラであるAmazonに頼ることにしたのだがこれがすべての間違いの始まりだった。
深夜睡魔と戦いながらスマホを操作していたのがいけなかった。意識が半分飛んでいる状態でポチった商品はあろうことかサイズ違いの別物。
「あ、間違えた」と気づいたのは注文確定の直後だった。すぐに履歴を開きキャンセルボタンを押す。その間わずか1分足らず。これなら間に合うはずだ。しかし画面に表示されたのは「キャンセルできませんでした」という冷徹な文字列だった。
早すぎる。こちらのミスを修正する隙を与えないほどAmazonの物流システムは優秀でそして慈悲がない。「出荷準備中」というステータスはもはや鉄壁の牢獄だ。ロボットたちが秒速で商品をピックアップし箱に詰めてしまったのだろうか。その有能さが今だけは心底恨めしい。
ふと「これってクーリングオフできないのか?」という疑問が頭をよぎる。いらないものに2000円近く払うなんてドブに金を捨てるようなものだ。しかし残酷な現実はここにもある。基本的に通信販売には法的なクーリングオフ制度は適用されないのだ。訪問販売のような不意打ちとは違い通販は自らサイトにアクセスし自らの意思で注文ボタンを押したとみなされるからだ。もちろんAmazon側のサービスとして返品は可能だが未開封なら全額返金でも返送料はこちら持ちになるケースが多い。手間と送料を天秤にかけるとどっちが得なのかわからなくなる。
「まあブログのネタになったからいいか」
そう自分に言い聞かせて心を落ち着けようとするが電卓を弾けば答えは出ている。たかが数百文字の愚痴日記に原価2000円は高すぎる。コストパフォーマンス最悪の記事だ。 届いたサイズ違いのフィルムは愚かさの記念碑として部屋の隅に転がることになるだろう。
「深夜の寝ぼけた買い物は酔っ払って契約書にサインするのと同じ」
高い授業料を払って得た教訓を割れた画面のままメモに残した。