三寒四温とはよく言ったもの。春の陽気が顔を出したかと思えば翌日には冬が厳しく揺り戻してくる。この激しい寒暖差に自律神経も悲鳴を上げる一歩手前。
「このままではいけない身体を内側から温めて整えなければ」そう思い立ち湯船に浸かることにしたのだがそこで文字通りの地獄を見た。
結論から言えば48℃という設定はあまりに熱すぎた。冷え切った身体に喝を入れるつもりがそれはもはや入浴ではなく自分という個体をボイルする行為に等しかった。案の定激しく逆上せ命からがら脱衣所へと這い出たところでそのまま意識を失うように倒れ込んでしまった。
どれくらいの時間が経っただろうか。冷たい床の感触で目が覚めた時、真っ先に思ったのはなぜこんな汚い場所で倒れてしまったんだというあまりに情けない後悔だった。せっかく湯船で汚れを落としたはずなのに埃っぽい脱衣所の床と密着したことですべてが台無し。またシャワーを浴び直しじゃないか…… 意識が朦朧とする中で抱いたその感想は我ながらひどく滑稽でどこか他人事のようだった。
自律神経を整えるために必要なのは極端な刺激ではない。40℃前後のぬるま湯でゆっくりと副交感神経を優位にすることだ。それなのに暴力的な熱さで強引に解決しようとして逆に身体を危機に晒してしまった。三寒四温という自然の揺らぎに抗おうとして自らの手でそれ以上の混乱を招く。適度という言葉の重みを僕は脱衣所の冷たい床の上で文字通り身をもって学んだ。
反省している。48℃の湯船は冬の寒さへの復讐にはなっても健康への近道にはならない。今夜はもう熱いお湯のことは忘れて静かに眠ろう。次に浴室のドアを開ける時は、もっと自分をいたわる温度で静かな和解を試みたい。