今日は一日、ぐだーっと寝っ転がって過ごしていた。
身体を動かしていないはずなのにそれでも腹は容赦なく減る。重い腰を上げる代わりに枕元の文明の利器を手に取った。スマートフォン。
今の時代これを使って電話をかけるなんて野暮なことはしない。ユビキタスの恩恵を最大限に享受するつまりデリバリーの注文。
マクドナルドの公式アプリを開き手際よく注文を済ませる。あとは待つだけ。なんと楽な時代だろうか。
到着予定は大体30分後。アニメを1話観ていればちょうど熱々のバーガーが届く計算。 画面の中の物語に没頭し期待に胸と腹を膨らませながら30分を過ごした。
1話観終えてアプリを確認すると画面にはまだ「準備中」の文字。まあ忙しいんだろうと自分に言い聞かせもう1話観て待つことにした。さらに30分。合計1時間が経過しアニメの余韻と共にスマホを覗き込んだ僕を待っていたのは、想だにしない結末だった。
「注文はキャンセルされました」
無機質な通知が1時間を一瞬で無に帰した。理由はわからない。ライダーが見つからなかったのか店舗がパンクしたのか。確かなのは1時間待った末に手元には何もなくただ腹の虫が虚しく鳴り響いているという現実だけ。
どこにいてもいつでも繋がるユビキタス社会。指先一つでお膳立てされるはずだった幸福はシステムの不具合や現場の都合というデジタルでは制御しきれない穴に吸い込まれて消えてしまった。文明の利器を使いこなしているつもりが実はその気まぐれに生殺与奪の権を握られているだけなのではないか。
お腹は減ったままだ。最初から自分の足で買いに行っていれば今頃はとっくに満腹で再び夢の中にいたはずなのに。便利さに依存しすぎた代償を今この酷い空腹感とともに支払っている。結局最後は自分の筋肉を動かしてコンビニまで走るしかないのか。画面の中で完結するはずだった僕の休日は皮肉にも最もアナログで原始的な自力での調達という幕切れを迎えようとしていた。