花粉症の季節が身体の細部をじわじわと侵食している。眠りは浅く意識が途切れても闇の底まで降りていけない感覚。薬の副作用なのか口内は砂漠のように乾燥し目は執拗なかゆみに襲われる。無意識のうちに寝ながら目を掻いているのだろう朝の鏡に映る自分はどこか疲弊している。
舌ブラシで舌苔を取り除くと粘膜が荒れているのか真っ赤に染まることもあり身体の内側で何かが悲鳴を上げているのがわかる。
さらに右側の扁桃腺が奇妙な存在感を放っている。まるでゴムかガムの塊がそこに張り付いているような違和感。その気になれば飲み込めるのではないかというほどの実体感を持って喉の奥に居座っている。熱がないのが救いだがこれは風邪というより花粉による炎症と薬の副反応が重なった結果なのだろう。のど飴を常に口に含み無理やり湿度を保つ。それ以外に有効な手立てが見つからないもどかしい持久戦。
仕事中Apple Watchが不意に高心拍数の通知を飛ばしてきた。
一度ならず何度か。座って作業をしているだけなのに心臓だけが先を急いでいる。薬のせいで頭がボーッとしているから自覚症状はないが実は自律神経が悲鳴を上げるほど体調が悪化しているのかもしれない。自分の感覚よりも手首の上の機械の方が正しく自分の異変を察知している。
薬に思考を奪われ身体の境界線が曖昧になる感覚。自分が今どの程度大丈夫なのかすら判断がつかない。この季節特有の呪いだと割り切るにはあまりにも現実的な通知と違和感が積み重なっている。
今はただ余計な動きを止め嵐が過ぎ去るのを待つように呼吸を整えるしかない。