スピカぴかぴかましゅまろパクパク

日記(のようなもの)を毎日更新!!

禁忌の快楽と不確定な勝負【26/3/11】

朝の目覚めを支配するのは春の暴力的なかゆみ。

まぶたの裏側を指先でなぞるあの感触は理性など一瞬で吹き飛ばすほどの甘美な中毒性を孕んでいる。脳が快楽物質を分泌しているのではないかと疑うほどその瞬間の充足感は凄まじい。

しかし眼内にはICL(眼内コンタクトレンズ)という精密なデバイスが鎮座している。掻くという行為はその聖域を自ら物理的に損なうリスクを伴う禁忌に他ならない。本能の快楽とその後に訪れる代償への恐怖。その狭間で悶えながら昨夜たった一錠の薬を飲み忘れた昨日の自分をこれほどまでに激しく呪いたくなる朝はない。

予防という防備を自ら崩した代償は赤く染まった眼球というあまりに生々しく不条理な形で突きつけられる。

 

そんな個人的で矮小な苦闘の最中ふと視界に飛び込んできたのはWBCのアメリカ敗退危機というニュースだった。

野球大国が一次ラウンドの淵で喘ぎ、屈辱の予選敗退という崖っぷちに立たされている。どれほど強力な打線を並べようとも野球というスポーツには実力の多慮だけでは説明のつかない不確定性が常に付きまとう。

完璧に捉えたはずの鋭い一打が吸い寄せられるように野手の正面を突き一つのアウトへと収束していく不条理。実力がある者が百パーセント勝つのであればそれはもはや競技ではなくただの検定であり物語としての輝きを失ってしまうだろう。

他国の敗北をどこか冷淡にしかし興味深く眺めていられるのはそれがまだ自分を直接脅かす火の粉ではないというある種の特権的な無責任さがある。

 

一粒の薬一瞬の指先の動きそして打球が飛ぶわずか数センチの角度。

世界は私たちが自らコントロールできていると錯覚している以上に微細なズレによってその色を劇的に変えてしまう。ICLを守ろうとする本能との戦いも、巨大なスター軍団が不運に沈む姿も、根源的には同じままならなさの変奏曲なのかもしれない。