WBCの試合を観ながら日本野球の現在地を俯瞰すると一つの大きな違和感に突き当たりる。
それは日本人選手の卓越した「技術」と世界基準の「出力」の間に横たわる深い溝。
日本の選手は確かに行儀が良く丁寧な守備や緻密なバットコントロールにおいて世界屈指のレベルにある。しかし国際舞台で100マイル近い速球が飛び交いそれに対するスイングスピードが極限まで高まった結果として生まれる暴力的な打球速度を前にしたとき日本の内野陣特にショートを守る選手たちの体格の細さがどうしても気になってしまう。
現在の日本のショートを見渡すと源田壮亮選手や小園海斗選手のように俊敏なフットワークとテニスプレーヤーのようなしなやかな体つきを持った選手が主流。
彼らの守備は芸術的であり国内リーグではこれ以上ない最適解に見える。しかし打球速度が180km/hを超えるような世界レベルの打球が増えれば野球の構造そのものが変容する。
速すぎる打球を処理するために守備位置は必然的に深くなりそこから一塁を刺すには深い位置からでも矢のような送球を投じられる圧倒的な肩の強さとリーチの長さそして強い衝撃を受け止めても体軸がブレない強靭なフィジカルが必要不可欠となる。つまり打球の出力が上がれば内野手は必然的にフィジカルモンスター化せざるを得ない。
かつて日本には松井稼頭央という圧倒的な身体能力を武器にした大型ショートが存在しした。
その後、坂本勇人選手のようなサイズのある選手も現れたが近年の傾向を見ると再び小型で器用なタイプへ先祖返りしている印象を拭えない。
日本野球に根強く残るセンター返しや右方向への意識、コンパクトな振りといったバットコントロール信仰が結果として選手の肉体をこじんまりとした枠に閉じ込めてしまっているのではないか。
この現状を打破するためにはあえて環境から変える必要がある。
例えば日本のプロ野球においてかつてのラビットボールのようにもっと飛ぶボールを導入する。ボールが飛ぶようになれば必然的に打球は強くなり内野手は今の体格のままでは対応しきれなくなる。守備側が生き残るために必死に身体能力を引き上げざるを得ない状況を意図的に作り出すことで内野手の大型化を促す。
統一球導入以降日本の打者はどこか小さくまとまってしまった感があるが環境を出力至上主義へ振り切らせることで日本野球の進化を加速させられるはず。
同時に育成年代の文化も根本から見直すべき。中学や高校の段階から技術練習を削ってでもウェイトトレーニングに充てる時間を増やすべき。もちろん怪我のケアや熱中症対策は前提だが野球という競技を高いレベルで続けるためには何よりもまず野球をできる身体という土台が必要。
185cm以上、90kg前後の体躯を持ち50mを6秒台で駆け抜けスクワットやデッドリフトで200kgを超える出力を叩き出す。そんなショートが当たり前に並ぶ内野陣が実現すれば日本野球の景色は一変すると思う。
大谷翔平選手や鈴木誠也選手が証明している通り強い打球の価値はもはや疑いようがない。
一朝一夕には変わらないかもしれないが若い世代がこの出力の重要性を肌で感じ価値観を塗り替えていくことでいつか日本の内野がフィジカルモンスターたちで埋め尽くされる日が来る。
日本野球も進化の途上にあるのだと信じたい。