二度目の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。
前回の感想はこちら。
今回は吹き替えの4DXという前回とは趣向を変えた布陣で臨んだ。
結論から言えばこの作品に過剰な演出や翻訳のフィルターは不要だったのかもしれない。劇中で交わされるのは科学を扱いながらも驚くほど平明な言葉ばかりでむしろその簡潔さが作品の強度を支えている。そして4DXのギミックは広大な宇宙の静寂を味わうには少し騒々しすぎた。とりわけ劇場の空気を演出しようと放たれた煙が肝心のスクリーンの視認性を奪うのは本末転倒。
それでも作品そのものが持つ力がそれらすべての雑音をねじ伏せほぼ満点という評価を揺るがせなかった。やはりこの映画は本物なのだろう。
劇場の外に出れば昨日から降り続くまとまった雨が春の街を濡らしていた。
つい数日前まで季節を先取りしすぎたような不気味な暑さが続いていたのにこの雨が一気に熱を奪い去っていった。寒暖差などという一語では済まないほどの急変ぶりでもはや体調を崩せと言われているに等しい。
重い雲の下冷えた空気が肺の奥まで入り込み冬の残党が最後に存在を主張しているかのよう。
だが本当に恐ろしいのはこの雨が上がった後の静けさである。降る水に一時的に抑え込まれた花粉たちが次の気温上昇を合図に一斉に解き放たれる気配がある。
杉のピークが過ぎたところで次はより執拗なヒノキの番。雨上がりの晴天は多くの人にとっては歓迎すべき景色だろう。だがアレルギー持ちにとってそれはお薬代の増加と粘膜への攻撃が再開する合図にすぎない。
宇宙の孤独と友情に胸を熱くした直後、現実の気象と生理現象に冷や水を浴びせられる。
映画館の4DXがもたらした不必要な煙よりもこれから街に満ちる見えない粉塵の方がはるかに切実な映像の邪魔であり生活の邪魔。
せめてこの雨が花粉の気配ごとすべて洗い流してくれないものか。鼻の奥に忍び寄るかすかな痒みを感じながらまた次の戦いに備えて薬へ手を伸ばす。