昨日のケーブルクランチの代償は少し妙な形で現れた。
腹筋の上部がじんわりと痛み始めたのだがどうやら脳はその信号を素直に筋肉痛とは受け取ってくれなかったらしい。腹筋の悲鳴を内臓の異変だと誤認しこちらの意思とは無関係に「腹痛だトイレへ行け」と警報を鳴らし続ける。結果として下痢に見舞われもはやこれはトレーニングの成果なのかただの消化器トラブルなのか自分でも判別がつかない混沌に放り込まれた。
自分の身体でありながらそのフィードバックを正しく読み取れない。この噛み合わなさが地味に堪える。
追い打ちをかけたのが今日の移動環境だった。電車の中は異様に暑く背中を汗が伝う。黄砂がひどいという予報に怯えて花粉症の薬を飲みそのうえ暑さの中でもマスクを外さなかった。
薬による眠気とこもった熱気による消耗がじわじわと重なり頭の中は霧がかかったようにぼやけていく。あれはたぶん熱中症の入口にかなり近かったのだと思う。意識が遠のき記憶がところどころ途切れ思考の輪郭まで曖昧になる。身体が発している警告を今度は脳の側が処理しきれなくなっていた。
振り返ればアンダーカロリーの影響も無視できない。ダイエットのために燃料を絞った身体は平時なら耐えられるストレスにも脆くなる。
黄砂、暑さ、薬の副作用。
その三重苦を受け止めるだけの余力が今日はもう残っていなかったのだろう。脳へ回すべきエネルギーすら足りず生命維持を優先した結果記憶や集中力のような機能が切り捨てられていった。まるで低電力モードに強制移行した機械のように身体は不要な処理を次々と停止していった。
なんとなく調子が悪いという曖昧な一言では済ませにくいほど今日は全身がエラーログを吐き続けていた。もしこれがシミュレーションゲームなら一度ロードし直して設定を見直せば済む話なのかもしれない。だが生身の身体はそうはいかない。
失われた水分とカロリーを補い乱れた神経を落ち着かせ睡眠で修復を待つしかない。明日の朝にはせめて脳がこの痛みを異変ではなく正しく筋肉の成長痛として認識してくれればいい。