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そのあっけなさ、少し戸惑う【26/4/27】

いつもの散歩道には長いあいだ当たり前のようにそこにある光景があった。意識して見ていたわけではないのに確実に視界のどこかに存在し続けていたもの。言ってしまえば少し下世話な話になるがコンドームの自販機。

 

色あせた筐体には明るい家族計画という文字。どこか時代錯誤でそれでいて妙に真面目なそのフレーズが余計にその存在を際立たせていた。これ本当に動いているのかと疑いたくなるほど古びていてもはや街の風景に溶け込んだ半ば化石のような存在だった。

 

けれどそれは確かにそこにあった。

それがなくなっていた。今日何気なく視線を向けた先にはただ何もない空間が広がっているだけだった。いつどのタイミングで撤去されたのかは分からない。あれほどの存在感を放っていたものが気づかないうちに消えている。そのあっけなさ、少し戸惑う。

 

不思議なもので失って初めて気づくことがある。あの古びた自販機に確かに愛着のようなものを抱いていたらしい。

コンビニに立ち寄ると必要もないのにコンドームの棚に目がいくことがある。あの少しだけ気まずくそれでいてどこか現実の裏側を覗き見るような感覚。あの自販機はそうした曖昧な空気を路上にさらしている存在だった。誰が買うのかいつ補充されるのか。そんな想像が単調な散歩道にささやかな物語を与えてくれていた。

 

あると思っていたものが消える寂しさは単なる不便さとは別の次元にある。記憶の地図から目印が一つ消え歩き慣れた道が少しだけ別の場所になる感覚。役目を終えた機械は静かに退場しそこにはただ空白だけが残る。

 

その壁を眺めながらもう戻らないいつもの光景。弔うべき、なのかな。