金曜日。耐えがたい腰痛というシステム警告に従いついに医療機関で本格的なデバッグを受けることになった。MRIとレントゲンという外部デバイスによって自分の内部構造が可視化される。そこで出力されたログは予想外に複雑だった。
まず安堵すべき結果がある。2年前と比較して腰椎の状態そのものは悪化していなかった。
スクワット110kgでの失敗。その後に続いた鈍痛。もっと深刻な構造欠陥たとえばヘルニアの再発を覚悟していたが診断はシンプル腰痛。要するに過負荷による一時的な炎症の範囲に収まっているらしい。
もちろん痛いものは痛い。だが壊れたのではなく過負荷だったという事実には大きな差がある。処方された痛み止めと湿布をして炎症を鎮める。それが現時点での最適解になった。
しかし本番はそこからだった。
腰のついでに撮影した首周辺のレントゲンが新たな課題を突きつけてきた。
ひとつはストレートネック。
本来ゆるやかにカーブしているはずの頸椎がまっすぐに近い状態になっているという。
原因に心当たりはありすぎる。スマートフォン、パソコン、下向きの視線。現代人特有のうつむき続ける生活がそのまま骨格へ刻み込まれていた。今後は意識的に視線を上げることも立派なリハビリになるらしい。
そしてさらに意外だったのが脊柱側弯症だった。
しかも先天性。つまり生まれつき背骨が左右にカーブしていたという。
正直、自覚はなかった。今まで普通に生活し筋トレもしてきた。だが思い返してみればフォームの左右差や特定部位だけ妙に疲労が溜まりやすい感覚には説明がつく部分もある。
要するに、自分は完全な左右対称のハードウェアではなかった。
しかしまだ未使用の伸長余地があったという妙な解釈すら頭をよぎる。
もちろん冗談半分だ。だが同時にこの曲がった背骨こそがこれまで自分の体重や負荷を支え続けてきた現実でもある。真っ直ぐではないからこそ別の形でバランスを取ってきた。つまりこれは欠陥ではなく仕様なのかもしれない。
だから今後必要なのは正常な人間のテンプレートへ無理やり矯正することではない。自分専用の設計図を理解したうえでそのハードウェアに最適化した筋肉を作ることだ。
左右差を埋めるための体幹。
腰椎を守るためのコルセット。
首を支えるための姿勢改善。
やるべきことは増えた。だが敵の正体が見えたぶん以前よりずっと戦いやすい。
真っ直ぐではない背骨でどこまで重い重量を扱えるのか。
それはそれで少し面白い挑戦にも思えてくる。
さて明日からのリハビリ。
まずはちゃんと上を向くことから始めてみようと思う。