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季節が壊れた日と、腕の中を流れるもの。【26/5/15】

最近本当に季節の境界が曖昧になったと思う。

 

朝は肌寒く上着が欲しくなる。ところが昼には汗ばむほど暑くなる。同じ一日の中に春と夏が同居しているような感覚だ。

昔「三寒四温」という言葉を習った記憶がある。本来は寒い日と暖かい日が数日単位で入れ替わりながら春へ向かうという意味だったはずだ。しかし今の気候はその変化を24時間単位でやっているように見える。

 

去年も似たようなことを考えていた気がする。毎年最近おかしいと言いながら結局その異常に慣らされていく。まるで同じ回を繰り返し見せられているような不思議な感覚がある。

 

その混乱を一番実感するのが車のエアコン。

朝は暖房。昼は冷房。夕方にはまた暖房寄り。ダイヤルを何度も行き来させながら今どっちが正解なんだと考えているうちに自分の体調までおかしくなってくる。

外の気温に合わせようとしているのにむしろ身体の感覚のほうが壊れていく。

最近は気候に適応しているというより無理やり同期させられているに近い感覚がある。身体が環境についていけていない。なんとなくだるい。眠い。頭が重い。その原因が何なのかも、はっきりしない。

 

そんな中で妙に怖くなる瞬間がある。

血圧を測る時だ。

腕に巻いたカフがぎゅっと締まり圧力が高くなっていく。その時皮膚の下で血管が浮き上がる感覚がある。指で触れるとそこには確かに脈打つものがある。

普段は意識しない自分の中の流れが急に表面へ現れる。

それが妙に怖い。

この細い血管が破れたらどうなるのか。今こうして動いている身体も結局は非常に脆い仕組みの上に成り立っているだけではないのか。そんな考えが一瞬頭をよぎる。

 

普段人間は自分の身体をあまりにも当然のものとして扱っている。歩けることも呼吸していることも血液が流れていることも全部正常動作として意識の外へ追いやっている。

でも血管が浮き上がる瞬間だけは違う。

「ああ本当に中で何かが動いているんだな」と急に現実味を帯びる。

 

少し気味が悪くて少し不安になる。触れてはいけないものに触れている感覚に近い。

それでもこの細い管の中を今日も血液が流れ続けている。

気温が狂い季節感が崩れ身体の感覚まで曖昧になっていく世界の中でその脈だけは止まらずに動いている。

それが今のところ自分がまだちゃんと生きている」と確認できる一番確かな感覚なのかもしれない。