走ろうと思って外へ出た。いつものように準備運動を始める。伸脚をしている最中ふと太ももに目をやると一匹の蚊が止まっていた。
反射だった。何も考えずに「パチン」と叩く。
見事に命中。蚊はその場でご臨終となった。
ところが違和感がある。刺された場所が痒くない。その代わり妙に痛い。
どうやら吸血の途中だったらしい。唾液を注入される前だったのかいつもの痒いではなくただ叩いた衝撃と針を刺された痛みだけが残った。
なんだこれ。得したのか損したのかよく分からない。少しだけ気分が下がる。
そんなことを思いながらそのままトレーニングを始めた。
すると今度は小さな虫が一直線に目へ向かって飛んでくる。慌てて目を閉じる。その瞬間だった。
まぶたが虫を挟み込んだのか一度の瞬きでその虫は動かなくなってしまった。
二匹目である。
別に積極的に殺そうと思ったわけではない。一匹は吸血されそうになったから防衛反応。
もう一匹は目に突っ込んできたから反射的に目を閉じただけ。どちらも自分が悪いとは思っていない。
思ってはいないのだけれど結果だけ見ると二つの命が失われたことになる。なんとも後味が悪い。
体を鍛えようと思って外へ出ただけなのになぜか生態系にまで影響を及ぼしてしまった。
夏になると虫が増える。
人間にとっては厄介な季節だが彼らにとっては活動の本番なのだろう。
願わくばお互いにもう少し距離感を保って生活したい。
自分はただ走りたいだけだし虫は虫で好きに飛んでいてくれればいい。
少なくとも目だけは狙わないでほしい。あれは本当に勘弁してもらいたい。