信号待ちをしていたらアメリカンバイクが車の隙間を縫うようにすり抜けていった。
あれは本当にやめてほしい。
乗っている本人はきっと映画の主人公にでもなった気分なのだろう。低い車体、重そうなエンジン、少し悪そうな雰囲気。本人の中では「自由」と「反骨精神」がいい感じに仕上がっているのかもしれない。
ただ周りから見ると違う。
ただの危ない人である。
動いている車の横を無理に抜けていくバイクは格好いいというより怖い。運転している側からすると突然視界の端に現れる不確定要素でしかない。本人はテクニックのつもりでもこちらからすれば公道に放たれた当たり判定の小さいトラブルである。
しかも乗っていたのがかなり細身の若者だった。
もちろんどんな体格でどんなバイクに乗ろうと自由だ。自由ではある。
ただ大型のアメリカンバイクというのはある程度の重厚感込みで成立している乗り物だと思っている。そこに風が吹いたらそのまま標識まで飛ばされそうな体型の人間がまたがっているとバイクに乗っているというよりバイクにしがみついているように見えてしまう。
たぶん本人はワイルドに見せたいのだろう。
でも現実にはワイルドというより無理してるが先に来る。
服に着られるという言葉があるがあれは完全にバイクに乗られていた。
それでも安全運転ならまだいい。体格と車種のアンバランスさも、個性として成立する。好きなものに乗るのは自由だしそこは本来誰にも文句を言われる筋合いはない。
問題はそこに危険運転が乗ってくることだ。
危ないすり抜けをしている時点でもう全部が台無しになる。本人の中では「俺、決まってる」なのかもしれないが周囲の評価はかなり冷静だ。
「あ、関わりたくないやつだ」
それだけである。
バイクは悪くない。アメリカンバイクも悪くない。むしろちゃんと乗れば格好いい乗り物だと思う。
ただ乗り手が勘違いしているとどんな名車も一気に残念な小道具になる。
公道は自己演出のステージではない。
少なくとも他人の車の隙間をすり抜けてまで披露する一人芝居ではない。