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過ぎ去る風景と残る思い出【24/12/26】

小学生のころ学校から見えるひときわ高い塔みたいな建物が気になって仕方なかった。遠くにそびえるその姿に「あそこに行ってみたい」と友達と話していたのを覚えている。ある放課後ついに計画を実行することになり、数人で自転車を走らせた。

 

道中、特に何かが起きたわけではない。ただペダルをひたすら漕ぎ、塔を目指して進む。それだけのこと。でもその距離感が面白い。遠くに見えていたはずなのに近づくと意外とすぐそこに感じる。でもまたしばらく進むと、まだまだ遠い気がする――そんな不思議な感覚の繰り返しだった。

 

着いてみれば特別な発見があったわけでもなかった。ただ「ここにあったんだ」と確認しただけ。それでもその日の記憶はなぜか鮮明に残っている。隣の市にあるその塔は、放課後の数時間でたどり着ける距離だったけれど小学生だった自分たちにとってはちょっとした冒険だった。

 

最近その塔を電車の窓から見た。最寄り駅から2駅、車なら自宅から10分もかからない距離だ。大人になった今では簡単に行ける場所。それでもあのころに感じた遠さや達成感は今も胸のどこかに残っている。

 

ただ、その塔の姿は少しさびれていたように見えた。きっと時間が経ったせいだろう。周囲の風景も変わりあのころのような輝きは感じられなくなっていた。それが自然なのだと思う。風景は変わっていくものだ。でも思い出の中にあるその景色はいつまでもそのままだ。

 

人生を大きく変えたような出来事ではない。ただ自転車でひたすら走り、友達とその場に立った。そんなささやかな記憶がなぜこんなに鮮明に残っているのだろう?その理由は分からないけれどその日のことを思い出すと不思議と胸が温かくなる。

 

電車の窓越しにその塔を見つめていると不意に感じた。もしかしたらあの頃の自分がそこにいるのかもしれない――ペダルを漕ぎながら、遠くの塔を目指して夢中で進んでいたあの自分が。過ぎ去る風景の中にあのときの自分が立っているような気がした。