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アップルウォッチの憂鬱【25/12/8】

今朝目が覚めた瞬間左手首に違和感を覚えた。軽い。あまりにも軽すぎる。

恐る恐る視線を向けるとそこにあるはずの黒いバンドがない。あるのはただの素肌だけ。やってしまった。昨晩Apple Watchを着けずに寝てしまった。

 

これ地味だけど結構ショックがデカい。毎日毎日睡眠の質を計測してアプリに並ぶグラフを眺めるのを日課にしている身としてはたった一日とはいえデータに「穴」が空くのがなんとも言えず気持ち悪い。継続していた記録が途切れるあの喪失感。ああ昨日の僕の睡眠はデジタルの世界では「存在しなかったこと」になってしまった。

 

まあもう過ぎてしまったことは仕方がない。覆水盆に返らず。諦めるしかない。でも冷静に昨夜のことを振り返ってみると一つ気づくことがある。時計を腕に巻くのすら忘れるほど布団に入った瞬間に意識が飛び泥のように眠りに落ちていたということだ。そして朝まで一度も目が覚めることなく時計がないことに気づきもしなかった。つまり体感としては睡眠の質は「かなり良かった」はずなんだ。

皮肉なもんだよな。機械で測定しようと必死になっている時は浅い眠りだったりするのに測定器を忘れるほど無防備な時に限って最高の睡眠が取れているなんて。「記録なんて気にせずただ眠れ」という体からのメッセージかも。

 

とはいえやっぱりデータは欲しい。今日は充電が完了したら何をおいてもすぐに腕に巻こう。風呂上がり髪を乾かす前につけよう。

 

ふと魔が差したように考える。もしこんなことが二度、三度と続くようならそれはもう運命だと思ってあのバッテリー持ち最強の「Apple Watch Ultra」に買い替えてしまおうか? 充電の頻度が減ればつけ忘れるリスクも減るはずだ。完璧な論理だ。

……いやダメだ。冷静になれ。たかがつけ忘れ防止のために十数万円もする時計を買うなんて正気の沙汰じゃない。高すぎる。今のSeries9で十分。